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迫りくる危機 PAGE1

last update Dernière mise à jour: 2025-08-01 12:47:50

 ――夜八時ごろに母は帰っていき、さて、シャワーでも浴びようかと着替えとバスタオルを用意していたら、スマホにメッセージが受信した。

 差出人は真弥さんだ。

〈例のSNSの書き込みについて、さっそく明日から調べてみます。

 あの投稿のスクショを撮って送ってもらえますか? 投稿主のプロフだけで大丈夫なので〉

 わたしはさっそく言われたとおり、例の投稿のアカウントをスクリーンショットにしてメッセージに添付して返信した。

〈これが投稿した人のプロフィールみたいだよ。調査お願いします〉

 真弥さんからはすぐに、「ありがとうございます」と可愛いネコちゃんがペコンと頭を下げているスタンプが送られてきた。

 わたしはスマホを充電ケーブルに繋ぎ、シャワーを浴びた。パジャマに着替えて髪を乾かすと、スマホを座卓の上に置いたままの状態で入江くんに電話をかける。

『――もしもし、矢神? こんな時間にどしたん?』

「入江くん。あの……、今日のお昼休み、ひどいこと言っちゃってゴメン。入江くんだってもどかしいんだよ? なのにわたし、自分の気持ちばっかり押しつけちゃって、ホントにゴメンなさい」

『あー、あのことか。オレは別に気にしてねえからいいよ。謝るなよ。人任せにしてるのは事実だしな』

「ううん、そんなことない! あれはわたしが言い過ぎたの。反省してる。……でも、わたしのことが大切だから心配してくれてるのも事実なんだよね?」

『……お前なあ、そういう恥ずいことズバッと言うなよ』

 入江くんがぶっきらぼうに抗議してきた。電話だから顔は分からないけれど、彼はきっと照れているんだと思う。

「ゴメン……」

『でも図星、かな。オレはお前のことすごく大事に想ってるから、お前をここまで怖がらせてるアイツが許せないんだよ。今まではずっと人任せにして逃げてきたけど、いざって時にはもうオレは人任せにしない。矢神のことは、オレが絶対に守ってやるから』

「入江くん……、ありがと。やっとその言葉が聞けた」

 彼のその言葉は、ハッキリと「好き」って言われたわけじゃないけれど、わたしにとってはもう彼からの告白と同じようなものだ。

「入江くんがそこまで想ってくれてるだけで、わたし幸せだよ。だからもう、あんなこと二度と言わない。……わたしも、逃げてばっかりじゃいられないかな」

『ん? 何て?』

 わたしも彼のことが好きだって自覚
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